よく、お客様からの声で
- 今は昔みたいな臭い焼酎がなくなって悲しい
- 昔みたいな臭い焼酎は売ってないの?
- 焼酎は臭くないと飲んだ気がしない
- 昔の臭い焼酎の匂いが懐かしい
などのご意見を聴くことがあります。 昔のように と言っていただいている時点でこのリクエストはご年配の方から多い意見なのですが、現在残っている焼酎にご意見いただける方が満足するような「臭い焼酎」はなく、どんなものだったのかは闇の中です。
しかし、製造技術の進歩により芋焼酎は臭くなくなった、油取りをしっかりしてるから臭くなくなった、など様々な噂を聞きます。今回は芋焼酎が臭くなくなった理由を3つ紹介します。
芋臭い焼酎がなくなった3つの理由
実は焼酎の仕込み割合(原料の芋の量・水の量)や基本的な製造方法は大正時代からほとんど変わっていません。米麹と甘藷という組み合わせも同様です。では何が原因で芋臭さがなくなって来たのでしょう。
麹の製造技術が上がった
理由の一つは米麹の作り方が向上したことです。焼酎の麹はクエン酸を作るのが特徴です。クエン酸は雑菌を押さえる力が強いことから、焼酎の酵母にはクエン酸に強い酵母が使われています。汚染を防ぎ、宮崎や鹿児島など南国の焼酎が安全に作られているのも以前お伝えしました。
しかし酵母の管理はテクニックが必要となるもので、麹造りを間違うと酸臭などが発生し、それがいわゆる「臭い焼酎」と言われていた理由ではないかと考えています。日本酒蔵が東日本に多く、焼酎蔵が西日本に多いことも、焼酎作りに合った湿度や温度経過のパターンがあるからと言われています。現在は製麴装置も発展し、種麹メーカーや先日行われた本格焼酎技術研究会(リンク)などの講習会などが頻繁に行われるようになり、麹造りの失敗が少なくなったため、麹のクエン酸不足による酸臭などの異臭がなくなりました。
甘藷の品質が上がった
二つ目の理由として甘藷の品質向上が挙げられます。昭和40年代までは焼酎を作る上で品種が問われることはありませんでした。焼酎蔵元、農家、本格焼酎技術研究会などにより、芋焼酎に適した甘藷の選抜試験が行われ「コガネセンガン」が選ばれ、そこからコガネセンガンを使うようになり酒質が安定することになりました。その後国や県の研究機関が連携して焼酎用の新しい品種が誕生することになりますが、この誕生も「コガネセンガン」というベースがあったからと言われています。
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そして、甘藷の品質を上げる上でもう一点、新鮮さを重視し、畑から土のついた状態で蔵へ甘藷が運び込まれるようになったり、一つ一つ洗って傷のある部分を取り除いたりする作業が工程に加えられました。傷んだ甘藷は焼酎の匂いに直結するため、手作業で傷んだ甘藷の選別を行ったことで芋の傷んだ臭いはなくなりました。
油臭の対策について
芋焼酎の油臭の原因が不飽和脂肪酸エチルエステルの参加であることが判明したのが昭和53年のことでした。それまでの芋焼酎は、少し濁った状態で出荷されるのが一般的で、この濁りの成分である不飽和脂肪酸エチルエステルは酸化しやすく、酸化することで油のような匂いを発生します。そのため、焼酎を作った後に油を掬う工程が出来たり、酸化を控えるために瓶の色は日光の影響を受けにくい茶瓶に統一するなどして油臭のついた焼酎が出回ることを防いだのです。
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まとめ
今回は「昔ながらの芋臭い焼酎がなくなった3つの理由」を挙げさせていただきました。
焼酎は 麹の製造技術の向上・甘藷の品質向上・油臭の対策向上という3つの技術向上によって焼酎は誰もが飲みやすいアルコールに変化していきました。 もしかすると今後も今の焼酎が技術向上により全く違う焼酎に変わる未来もあるかもしれませんね。少し寂しい気もしますが、新しいお酒に出会えるワクワク感もありますね!
参考書籍:焼酎の科学