焼酎を造る上で欠かせない「酵母」ですが、パンを発酵させたり、チーズや、醤油、味噌を造る過程でも用いられている実は私たちの生活の中でも身近なものです。
焼酎に限らずアルコールを造る上でも欠かせない酵母ですが、今回は焼酎における酵母の役割を紹介していきます。
酵母とは
酵母は英語でイースト(yeast)と言い、菌類の総称であり、カビやキノコの仲間です。酵母菌と呼ばれることもあります。
酵母菌はお酒や醤油、味噌などの調味料、パンなど生成される際に用いられる発酵菌の一つであり、 食品に含まれる糖を「アルコール」と「炭酸ガス」に分解して発酵を行います。
焼酎における酵母の役割
酵母がなければアルコールを生成できず、焼酎は造れません。例として、弊社で造っている芋焼酎の造り方を、酵母中心に説明します。
① 酵母に麹と水を加えて発酵させ、1次もろみを造る
② 1次もろみに原料(芋)と水を加えて発酵させ、2次もろみを造る
※この場合1次もろみが「酵母」としての役割を行います。
③ 2次もろみを蒸留し焼酎を得る。
焼酎を造る上で、アルコールを取得する上で欠かせない酵母ですが、 焼酎造りに用いられる酵母はいわゆる「焼酎酵母」と呼ばれる もので、焼酎用に開発されたものになります。有名な酵母を挙げると、「宮崎酵母」「熊本酵母」「泡盛1号」「焼酎用協会2号、3号」「鹿児島2号、4号、5号、6号」など様々な種類の焼酎酵母が存在します。また、日本酒酵母やワイン酵母を利用した焼酎も最近では増えてきました。また、酒蔵によってはオリジナルの酵母を培養している蔵も少なくありません。
なぜこんなに種類があるのかというと、例えば、 酵母によってはアルコールの収得量が多い酵母が存在すれば、素材(芋や米、麦、黒糖など)によっては収穫量が変わる酵母もあり、主要香気成分の特定の成分を収得する上で用いられる酵母も存在したり、それぞれの酵母には特徴があります。
もちろん焼酎の酒質を決めるのは酵母だけではありません。発酵の時間や温度、芋(芋焼酎の場合)の形状、熟成度合い、もろみの熟成、温度管理、蒸留の方法や温度などによっても変わってきますが、酒質が酵母に大きく関わってくることは事実です。
特に芋焼酎では、酵母がアルコールと一緒に生成するカルボニル化合物やジカルボニル化合物、高級アルコール、エステル、硫黄化合物などの香味成分がそのまま商品に移行し、焼酎の風味を大きく左右するので、重要なポイントになります。
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平成宮崎酵母とは
全てではありませんが、あくがれ蒸留所で醸された焼酎のほとんどが「平成宮崎酵母」を使っている焼酎です。以前は宮崎県内の大半の焼酎蔵が「宮崎酵母」を使って焼酎を造っていましたが、お客様のニーズに合わせて「宮崎酵母」とは異なった性質を持っている「平成宮崎酵母」が宮崎県食品開発センターによって開発されました。
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平成宮崎酵母の特徴は、宮崎県食品開発センターのWEBページでも紹介されている通り、
- 甘み
- 丸み
- 原料特性が強い
などの特徴を持ち合わせています。
芋焼酎の2次仕込み(発酵)の際、もろみの温度が33~35度まで上がることがあります。もろみの温度が上がってくると酵母は弱って発酵性が悪くなり、香気成分も造れなくなります。逆に 温度が高くなってしまうとオフフレーバーと呼ばれる硫黄化合物や酢酸など、蒸留しても商品に移行する匂いが発生してしまうこともあります。 平成宮崎酵母は他の焼酎酵母と比べて焼酎製造において高い温度領域で増殖性、発酵性及び生存率に特に優れており、ストレスに強い焼酎酵母と言われています。
安定した酒質を造り出す上で弊社を含め宮崎県内県外の蔵が使っている酵母になります。
乾燥酵母について
商品化されている乾燥酵母として有名な酵母のひとつに、鹿児島酵母があります。
そもそも使用期限が2週間前後とされている酵母の場合、注文を受けてから培養する酵母の特性上、一部の蔵(鹿児島の場合離島にある蔵)などでは、天候によっては、送って届くまでに時間を要しているケースもありました。そこで安定供給するために乾燥化し、乾燥酵母が開発されました。
鹿児島酵母は乾燥した直後の生菌率は70%を超えており、高い乾燥耐性があることがわかりました。時間が経つにつれて生菌率は低下したものの、9ヶ月後であっても60%以上の生菌率を保ち、実用に問題ないレベルとされており、実用化されて5年経ちました(鹿児島県酒造共同組合が販売を開始した時期が平成29年9月)。仕込みの試験では、 仕込み後のもろみの分析結果、主要香気成分においても培養酵母と遜色ない結果になっており、一部の主要香気成分によっては培養酵母よりも数値が高い成分もあります。
まとめ
今回は焼酎酵母を紹介しました。酒質を左右する酵母は焼酎造りにおける最重要項目といっても過言ではありません。
基本的に焼酎の裏ラベルには品目や原材料名が記載されており、たまに酵母が記載されている場合があります。表記されている焼酎から、ご自身の舌に合う焼酎を探すことも焼酎を楽しむ方法の一つだと思います。