焼酎は、飲み方によって様々な顔を見せるお酒です。
ロック、水割り、お湯割、などの割り方をはじめ、割るものや、その時の気温・湿度、食べ物、誰と飲んでいるのか、様々な環境によって変わってきます(※焼酎だけに限らない要素もありますが)。
その中でも、水割り・お湯割に使用する「水」は焼酎の口当たりを左右します。
みなさんは焼酎に割る水を選ぶ場合、判断されているポイントはどこですか?
産地、値段、水質など、様々なポイントがありますが、今回は硬度について説明します。
軟水と硬水の特徴
すでに大半の方がご存知かもしれませんが、硬度とは水に含まれるカルシウムイオン・マグネシウムイオンの量を表した数値のことです。
一般的な基準とWHO(世界保健機関)が定めている基準は少し異なるのですが、下記の通りです。
軟水 | 中硬水 | 硬水 | |
一般的な基準 | 0~100mg/l 未満 | 100mg以上~300mg/l 未満 | 300mg/l 以上 |
WHO(世界保健機関)の基準 | 0~120mg/l 未満 | 120mg/l 以上 |
一般的な総称とWHO世界保健機関による硬水と軟水の基準値
ちなみに硬度は(カルシウム量mg/l×2.5)+(マグネシウム量mg/l×4)から算出します。
簡単にいうとカルシウムイオン・マグネシウムイオンが多く含まれるほど硬水になります。
国による水の硬度の違い
ヨーロッパや北米は硬水が多く、日本はほとんどの水が軟水と言われています。大地を形成する地層(土や岩など)の成分が異なることでカルシウムイオン・マグネシウムイオンの含有量が変わってきます。ヨーロッパや北米の場合、地層に接する時間が長く、日本の場合国土が狭いゆえに地層に接する時間が短い。このことが硬水と軟水が生まれる違いと言われています。
また、水の違いは国の食文化にも影響を及ぼします。その土地土地の食文化は水に合わせて生まれてきたと言っても過言ではありません。
軟水向き(日本) | 硬水向き(ヨーロッパ・北米) |
白米 | パエリア |
和食 | パスタ |
コーヒー | エスプレッソ |
緑茶 | スポーツドリンク |
硬水でご飯を炊いた場合、軟水よりもパサパサしたご飯が炊き上がります。好みもあるかもしれませんが一般的には白米には軟水、パエリアには硬水と言われます。また、ミネラルが多く含まれる硬水は和食の出汁を取る際に旨み成分が溶けにくいだけでなく、カルシウム・マグネシウムと結合すると灰汁担ってしまう場合もあります。カルシウム・マグネシウムの苦味(ミネラル感)を逆手にとって強い苦味に合わせるエスプレッソや、スポーツ後の水分補給にスポーツドリンクは効果的な面もあります。
焼酎と一番相性がいい水
焼酎と相性がいい水、それは軟水でも硬水でもなく、その焼酎を作った水です。
焼酎を作る過程において必要となる仕込み水・割り水というものがあります。ここではその二つの水について説明します。
仕込み水
読んで字のごとく仕込みの際に使用する水です。醪(もろみ)を作る1次仕込用の水と、1次仕込で発酵したもろみに加える2次仕込用の水として使用します。
1次仕込、2次仕込に関しては下記のリンクでも紹介しています。
弊社は蔵近くを流れる「清流耳川の伏流水」を用いて仕込みを行なっています。軟水です。焼酎作りにおいてミネラル成分を多く含む硬水では、焼酎の旨み部分とミネラルが結合し、旨み成分を減少させ雑味に変えてしまうからです。
割り水
仕込み水以上に、焼酎の質を左右すると言っても過言じゃないのが割り水です。蒸留されたばかりの焼酎は原酒と呼ばれ、アルコール度数が36~38度程度の強いお酒です。そこに加水していきながら度数を調整していき、商品になっていきます。では一升瓶にした時、水が占める割合はどのくらいでしょうか
36度の焼酎を、25度の焼酎に調整する場合(一升瓶)
①まず、1.8ℓ(一升瓶)の中にどれだけアルコールが含まれるのかを計算する。
25度の焼酎に設定する場合
(Ⅰ) 1800 (ml) × 25/100 = 450(ml)
②必要なアルコール量を確保するために、原酒 (36度)がどれだけ必要なのかを計算する。
原酒の量を A (ml)、原酒の度数を36度の場合
(Ⅱ) A (ml) × 36/100 = 450(ml)
A (ml) = 450(ml) × 100/36
A (ml) =1250 (ml)
1800 ml(一升瓶) – 1250 ml(原酒の量)=550 ml(割り水の量)
厳密に言えば、分子の大きさの違い等様々な要因で多少誤差が出るのですが一升瓶のうち550ml、約30%が水になります。
割水がどれだけ重要か理解いただけたと思います。
焼酎には軟水がオススメですが、、
焼酎の水割り・お湯割を作る時、オススメは軟水だと言えます。単純に「焼酎は日本で作られたものだから、日本の水質の方が合う」当然のことです。相性はいいでしょうが、これは焼酎に何を求めているか、好みの問題でもあるのでどちらがいいとは判断しづらいものがあります。
しかし、硬水だからだめだ!というわけではなく、もっとより自由な発想で楽しむべきです。まだまだ知られていない焼酎の魅力を探していきましょう。