払出が完了したら次は、焼酎造りで杜氏の腕の見せ所である「製麴」の工程になります。麹の出来不出来は焼酎の品質を左右するので最重要項目といっても過言ではありません。今回はもっとも杜氏の個性が出る「製麴」の工程を紹介します。
製麴(せいきく)
麹を作る作業のことを製麴といいます。具体的には蒸したお米などの麹原料に、種麹を混ぜて温度や湿度を調整しながら寝かせて、麹菌を繁殖させる目的があります。製麴の工程を説明していきます。
種付け(たねつけ)
払出によって蒸し上がったドラム内のお米に、種麹を振りかけて混ぜていきます。
引き込み
種付け後、ドラムを回転させながら風を送り、温度を落としていきます。
そこから7~8時間かけて麹が熱を持ってきます。麹の活発な温度は38~39度ですが、ほっておくと麹は39度以上に上がりその動きが鈍くなってしまうので39度になった時点で熱を下げるために風を送り込み38度まで下げ、39度まで上がっては38度まで下げるというルーティンを繰り返します。この時間も7~8時間。引き込みの時間自体は熱が上がる前から合わせると14~16時間程度かかります。
麹は経過時間や、水分量、麹の質によっても温度の上昇が変わってきます。10分で温度が1度上がる時もあれば、1時間かけて2.3度しか上がらないケースもあり、まるで子供の夜泣きのようなペースで、可愛い我が子の面倒を見る必要があります。
基本的には機械にまかせて、一定の温度まで上がったらドラムが回転しながら風を送り、一定の温度まで下がったら停まるという作業を全自動で行ってはいますが、「もしも」の時に備えて、杜氏は蔵に泊まり込み、逐一米の状態を確認しながら不測の事態に備えています。ここからは体力勝負です。
① AM4:30 温度は39度に上昇→風を送り36度へ
蒸し上がりの状態と比べてみても乾燥が進んできたのが見た目にもわかります。ちなみにこの時点で食べてもすでにお米の味はしないものの若干の甘みを感じます。
② AM7:40 温度は39度へ上昇→風を送り37度へ
AM4:30の時より乾燥が進みより、乾燥状態が増してきました。食べてみてもほとんど味がありません。
三角棚で麹菌を繁殖
回転ドラム式麹装置によって蒸しあがったお米を三角棚のある麹室に持っていき、そこで時間をかけて麹菌を繁殖させていきます。
ちなみに、あくがれ蒸留所の「三角棚」と払出作業で使った「回転ドラム式麹装置」の位置関係の説明をすると、回転ドラム式麹装置設備は2階にあり、その真下(1階)に三角棚がある麹室があります。2階で蒸しあがったお米をそのまま繋がっているホースで米を落とす仕組みです。蔵によっては同室にその二つがあり、手作業で移動させたり、ドラムが麹室の役割を担っているものも存在しますので、設備は蔵によって異なります。
このように回転ドラム式麹装置の下部に漏斗(ろうと)の役割をする合金を設置し、1階と繋がっている床下の穴に接続します。
ドラムの蓋を開けて、蒸し上がったお米をおろしていきます。
1階では天井についている穴にホースを接続し棚にお米を取り入れます。
取り入れたお米は、麹菌が発酵しやすくするために均一に並べられていきます。
送風、手入れ
ここからは細かなルールに基づき麹を発酵させていきます。
①三角棚に移して6時間は、36度まで上昇したら送風をかけ温度を下げます。
②6時間経過後、手入れの作業を行います。
③手入れ後8時間は、36度まで上昇したら送風をかけ温度を下げます。
④8時間経過後再び手入れを行います。
⑤手入れ後10時間は、34度まで上昇したら送風をかけ温度を下げます。
手入れの工程をFacebookにてライブ配信しました。
※常時、麹の状態(破精込み・破精周り・クラークなど)をチェックし、問題があったら即座に判断して対応する必要があるため、少なくとも三角棚に移してからの6時間+8時間+10時間=計24時間は目が離せない状況が続きます。
ここまでで「製麴」作業は終了です。この後は1次仕込みの工程を開始します。
焼酎造りにおける「製麴」まとめ
焼酎(米焼酎)造りの工程の一つ「製麴」の紹介をしました。焼酎造りは、主にこの「製麴」作業までがノンストップで目が離せない状態になります。この後の工程である1次仕込や2次仕込、蒸留の工程が楽というわけではありませんが、製麴は杜氏が最も焼酎と向き合っている工程といっても過言ではありません。